会員便り

2018年12月14日 信州上田四季彩祭

信州上田四季彩祭 その10 「おやき」

このところ「おやき」の魅力に取りつかれ、県内の「おやき」を食べ歩くのが楽しみになっています。

おやきは信州の代表的な郷土食の一つで、季節を問わずスーパーや惣菜店、又おみやげとして販売されていますが、信州にはかつて囲炉裏でおばあちゃんの手作りのおやきを焼きながら、家族の会話が弾む風景があったことでしょう

「おやき」は仏事とも深いかかわりを持っていて上田地方では8月1日にはお墓掃除をして「おやき」をつくります。あの世とこの世を隔てる石の戸に「おやき」をぶつけることで扉が開くと考えられています。この風習は上田地方だけなのかどうかは分りません。

おやきの調理法は地域によって異なり、焼いたり、蒸かしたり、また焼いて蒸かす、蒸かして焼くなど様々です。

昔は何処の家にも囲炉裏があったので、灰の中で蒸し焼きにしたり、囲炉裏の上の鉄板で焼いた後灰の中に入れて蒸し焼きにし、周りについた灰を落として食べるなど、地域によってそれぞれの「おやき文化」がありました

おやきの皮もいろいろで、上田地方ではパンのようにフワフワしていて、蒸してあるものが多いようです。

何十年も前に私が初めて食べたのは上山田温泉街のお店で売られているおやきで、油で揚げて焼いてありました。皮はこうばしく中はしっとりとしていて、その「おやき」が美味しくて、美味しくて。

懐かしい味にもう一度出会いたいのですが、そのお店の営業時間が18時半から22時なのです。上山田温泉へ泊まりに行くしかないですね。お風呂上がりのビールとおやきは美味しいでしょうね。

おやきの具材は野沢菜、切り干し大根、なす、カボチャなどが定番ですが、春は菜の花、秋はきのこ、胡桃やきんぴらごぼうなど豊富で、あずき餡やうぐいす餡、りんご餡など甘いおやきもあります。

おやきは素朴な家庭料理でしたが、最近は家庭で作ることも少なくなり、つい先日の新聞に地域のお年寄りがおやき文化を継承したいと、高校でおやき講習会を開いたとの記事がありました。

おやきの値段は1個120円から200円程ですが、北相木村・相木商会の「岩茸のおやき」は1個500円です。

岩茸は絶壁の岩の上にへばりついている苔の一種で、命綱を付けて収穫するほど危険な作業なのです。誰でも簡単に採れるものではなく、採った後は何度も何度も水洗いが必要で、とても手間が掛かります。以前岩茸採りの名人にお会いしたことがあるのですが、今ではその方たちも高齢化して益々貴重な食材になっているそうです。

それだけに「岩茸のおやき」は美味しく有り難くいただきました。

高原野菜で有名な川上村には「はりこしまんじゅう」というおやきがあります。おやきは具を皮で包むものが殆どですが「はりこしまんじゅう」はそば粉にショウガ、ネギ、味噌を練りこんで焼きます。

混ぜたものをお椀に入れ天井の梁に届くほど高く跳ね上げて形を整えたことからこの名が付いたそうです。

地域の人にとっては家庭でつくる素朴なお饅頭なので、数年前に川上村を訪れた時には地元の方にお願いして作って頂きましたが、今は農産物直売所マルシェ川上で販売されています。

また地域のお年寄りが古民家を利用してその味を伝えていますので、川上村を訪れた際には、新鮮な高原野菜とお蕎麦、そして「はりこしまんじゅう」も味わってみてください。

長野県内では「冷凍おやき」を宅配しているお店もありますので、寒い冬に温かな部屋や炬燵で信州の素朴な「おやき」を味わってみるのも良いのではないでしょうか

勿論信州で食べる「おやき」は格別ですが。

(小林良子S47文)