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2021年04月15日 オノマトペって・・・

「オノマトペってこうなんよ〜」 第4回 鳴くよウグイス平安京!

「近所を歩くキジ」2019年7月撮影

 オノマトペとは、フランス語源で『音を表す言葉』をいうものですが、日本語は世界でも、オノマトペが特に多い言語の一つと言われています。

「それは、なぜか?」

少しずつお話していきましょう。

 

今回は、『鳥の声』をトリあげたいと・・・ダジャレです。 

    鳴くよ(794年)ウグイス平安京!

 日本人なら、聞いたことがなくても知っている、ウグイスの鳴き声は、

「ホーホケキョ」

です。これにかけるから「ヘイアンキョウ」になるわけで、それがニワトリになると、鳴き声が「コケコッコー」ですから、

    鳴くよニワトリ各学校!

となって、「平安京」ではなく「各学校」の風景になってしまい、平安京に遷都された年号を覚えられなくなります。語呂合わせを成り立たせるためにも、ウグイスでなければいけないわけです。オノマトペを意味のある別の言葉に変換できるのも、日本人特有の音感覚だと言えます。

 

 日本人にとって、鳥の声といえば、冒頭で述べました、ウグイスの鳴き声ですよね。ウグイスの世界分布(引用0)を調べますと、日本と朝鮮半島、中国の一部にしか生息していない鳥だそうです。あの美しい春の声を欧米人に聞かせたら、聞き取ってくれるのでしょうか、と思いますね。(『オノマトペって、こうなんよ〜』第2回をご参照くださいね。角田先生(引用1)によると、欧米人は、環境音と判断してしまうと、聞こえません。虫の声ではないので、聞こえるかもしれません。)

 

 「春の声」と書きましたが、ウグイスを調べる(引用2)と、皆様がご存知の美しい声「ホーホケキョ」は、繁殖期の声で春に最も頻繁に聞こえる声となります。

この「ホーホケキョ」が中国語では(引用3)、「ビービーチャウチャウ」と発音されています。辞書の例文ですから中国語のオノマトペだと理解します。あの透明感のある鳴き声が、かなりだみ声の大阪弁?になっています。韓国のハングル語では、(引用4)「クェッコルックェッコル」だそうです。これは、「ケキョケキョ」というやはり春に聞かれる縄張りを守る警戒音とかなり似ています。でも、美しく伸びる「ホー」というところがなくなっているのが、かなり残念です。

 鳥の鳴き声のほとんどを文字に置き換えているのは、多分日本人だけだと思われます。これも、先に言った、ほとんどの音を左脳で処理しているということから、できる技なのだと思います(角田先生によると、右脳処理している音は、西洋楽器の音や機械音、ハーモニーのある音だけである。引用1p.38 p.40)。

 

 

 ここで、この『オノマトペって〜』のメルマガを書き始めて、読まれた方から『とりのうた』の情報をいただきました。下記の通りです。

 メールから一部引用:小さい頃、歌っていた遊び歌の『とりのうた』を思い出しました。

『ハトと トンビと ヤマドリと キジとカリガネと ウグイスが いっしょに なけば

ククピン ククピン ピンカラ ショウケン ソーラン ケンケン ケンカラチャット チンチロリンの ホーホケキョ』

でもどう考えてもこの鳥のラインナップに無さそうな声がはいってますよね。(笑)

 

とありましたので、検証してみましょうか。ネットから、実際の鳥の声を取ってきました。ネット上の読み物だからこそ、できる検証ですね。クリックしてみてください。(引用5)

ハトは、キジバト https://youtu.be/_fAEUZtrUgM  クワックク、ドゥードゥ(ククピン)

トンビは、https://youtu.be/vdbUHpAZ0c4 ピーヒョロロロロロ(ピンカラ ショウケン)

ヤマドリは、https://www.youtube.com/watch?v=rMeA031zQA8 ククッククッ、グルル(ソーラン)

キジは、https://youtu.be/FdPAPZX8Z24  キッキェッキェ (ケンケン ケンカラチャット)

カリガネは、https://youtu.be/GvfM-JRn-Bw  チッチロチチ (チンチロリン)

ウグイスは、https://youtu.be/yZElptIELFM  ホーホホホホケキョ (ホーホケキョ) 

 

 さて、いかがでしたでしょうか。ハトは、公園にいるハトとキジバトでは、ちょっと違うかもしれません。ククピンは許せる範囲の鳴き声ですね。トンビの鳴き声は多分、ピンカラショウケンまでの長い鳴き声だと思われます。ヤマドリは、キジに似た鳥なのですが、違う鳥の鳴き声を取っているのではないかと思われますね。地味な鳴き声だと書いてありますね。ソーランとは程遠い気がします。これを、トリ違いというのだと思います。はい。キジは、桃太郎さんのお話の頃から、ケンケンと音にしています。実際の音とは、違和感ありますけどね。ケンカラチャットのほうが近い気がします。カリガネは近い音ですね。本物を聞かなければ、マツムシではないかと思いますね。ウグイスは文句ないですね。

 まあ、以上の検証によると、ヤマドリだけは怪しい声ですが、ラインナップになさそうな声というのは、トンビの後半と、キジの後半でしょうか、でも、トンビの鳴き声は長くあってもいい後半ですし、キジに関しては、後半のほうが実際の鳴き声に近い気がします。ということで私は、この『とりのうた』の声は、それぞれの鳥のラインナップにあてはめられると考えます。

 実際の鳥の鳴き声から、これらのオノマトペを作った日本人はすごい!という気がします。

 

 ところで、キジの鳴き声を古今和歌集で「ほろろ」と書いてあると、国語の先生からのお知らせがありました。ウグイスもちょっと違うとの報告です。以下のとおりです。

 メールから一部引用:『古今和歌集』(905年成立)に鳥や虫の鳴く声を言葉として聞く例を見つけました。正統でフォーマルな歌の中には無いようで、

 巻第十九「俳諧歌」(滑稽な、ふざけた歌)と「雑体歌」に集中しています。

2033  春の野のしげき草葉の妻恋ひに飛びたつ雉子のほろろとぞなく

1011 梅の花見にこそ来つれ鶯のひとくひとく(人来)と厭ひしもをる

 

 「ほろろ」を調べたところ、キジのオスが、繁殖期に縄張りを宣言して激しくパタパタと羽ばたいて自分を大きく見せるのを母衣打ち(ほろうち)(引用6)というのだそうです。この音を「ほろろ」と表現したのだと思います。昔は、これも鳴き声の一つだと思っていたのではないかしら。

ウグイスの「ひとくひとく」も早口で言うと「ケキョケキョ」に近いような気がします。

 キジは、うちの近所にもいるのですが、繁殖期なので、ウグイスの美しいさえずりとともに、ギェッギェと大声をあげています。昔から人里近いところにいるし、見た目も美しいので、キジには実際よりかっこいい鳴き声があてられているような気がします。やはり愛着があるのではないでしょうか。

 角田先生は、日本語の特殊性による脳処理の違いを言っておられますが、日本は春夏秋冬がある地理的な特異性があり、人々は昔から生き物や自然に対して畏怖と深い愛情をもって接しています。その結果、それらの音も写しトリたいとオノマトペになったのでは、と。『トリの声』でした。

                         入江 愛子 (S58理)

 

引用:0.ウグイス(Japanese Bush Warbler )  

     http://dev.drnet.jp/birder/album/uguisu/index.html 

1.角田忠信著 日本語人の脳 言霊社

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4862090591/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=mixijp0a8-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4862090591&linkId=970608e2a20ac4dff5f22f7aee10c46c    

2.岡山県立図書館 電子図書館システム デジタル岡山大百科「うぐいすの鳴き方」より

  http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp/id/ref/M2019111918201608196 

3.weblio 中国語「ウグイス」を含む例文一覧(8)より聞き取る

  https://cjjc.weblio.jp/sentence/content/ウグイス 

4.YAHOO! JAPAN 知恵袋 ベストアンサー

  https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1361277033 

5.いきものの鳴き声 Sounds Japan 動画からと ヤマドリはさくらがおかぷぎゃおさんの動画

6.目に見えるいきもの図鑑>用語集>母衣打ち(ホロ打ち)

  https://orbis-pictus.jp/glossary/母衣打ち.php